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型よりも、眼差し / Vision Over Form

· Miscellaneous Notes

[注記] 以下の文章は、私(増田)自身が作成した2つの短いメモ(関連するテーマをめぐるもので、数ヶ月の時差のあるメモノート)を生成AIプログラムを用いて合成し、手動で直ししたものです。サムネイル画像も生成AIに作成させたものです。

型よりも、眼差し / Vision Over Form

つくづく思う。人類学は自分にとても合っている学問だと思う。これまでの研究テーマの変遷を振り返ってみても、分野や領域をまたぎながら考え、動いてこられたのは、人類学という立場に身を置いていたからこそだろう。日本では人類学はしばしば文系の学問と見なされ、「科学的ではない」と受け取られることもあるが、私自身は一貫して科学として人類学に取り組んできた。ただし、いわゆる「科学性」をそのまま教義のように受け入れること立場からは、少し距離を置いている。

アジの正しい捌き方を学んだら教科書通りにやれるようにと頑張って習得するだろうが、ブリを丸ごと差し出されたら「ブリの捌き方は教わってないんで」と言って、身近にいる「やれそうな人」を見つけては仕事を割り振るだろう。それは人類学的ではない。

科学性という言葉は、ときに特定の手続きや形式、サンプリングの妥当性といった技術的側面に強く結びつけられる。もちろん、それらは重要だが、それだけをなぞることで科学が成立するわけではない。むしろ、方法や枠組みを疑い、状況に応じて組み替えながら考える姿勢こそが、科学的な態度なのではないかと思っている。それは専門性、ではある。

「私の専門は●●です」というのは、いくつかできることの中で、ほかの人から任せてもらえるような「けっこう得意なこと」を指すのだと私は思っていたが、意外にも専門性が高くなるほど「それしかできない」「その考え方しかできない」という「やれることの狭さ」の自白になっていまう。それは大学ではよく見ることだ。自白した方が、たしかに楽ではある。


私が大切にしてきたのは、手元にある材料を、そのコンテクストに応じて組み合わせ、理解可能なかたちにしていくことだ。決められた方法を正しく再現することよりも、その場に応じて考え、試し、調整していく。その感覚が、ジリアン・テットのいう Anthro Vision である。完璧さよりも、適切さ。教科書的な正しさよりも、現場との応答関係。ブリであれ、まったく別の対象であれ、その都度「どう捌けるか」を考えてみる姿勢そのものが、人類学的な視点なのだと思う。

こうした姿勢は、研究者という存在のあり方にもつながっている気がする。研究者と、主に制度や手続きを担う教育者との違いは、「物事を面白がれるかどうか」にあるのではないだろうか。面白い、興味深い、やっていて楽しい——そうした感覚を自分の中に持ち、それを言葉にして伝えられること。学ぶことの喜びや、探究する楽しさ、世界を少し違う角度から眺める面白さへの入口を示せること。それもまた、研究の大切な役割の一つだと思っている。

一方で、大学教育の現場では、実務的な能力や、手続きの確実さ、枠組みの明確さが重視される場面も多い。それ自体は必要なことだが、そうした価値が前面に出すぎると、「面白がること」や、まだ言葉になりきらない問いが後景に退いてしまうこともある。とくに近年のMPH(私が主として教育に従事している国際公衆衛生の大学院プログラム)は、学ぶことがキャリア形成のための「正解の獲得」、つまり、特定の作法や語彙、評価されやすい型を身につけることへと傾きつつあるように見える。もちろん、将来につながる学びが求められるのは自然だし、それが悪いわけではない。ただ、その流れが強くなりすぎると、学びが「ドグマの習得」に近づき、結果として、問いに飛び込む面白さや、予定調和を崩して考える余白が少しずつ失われていくのではないか、という懸念がある。

私自身は、これまで、面白がりながら問いを立て、多少いびつでも考え続ける人たちが集まる場に魅力を感じて関わってきた。だからこそ、学びが「整った型」の習得へと寄っていくときに、どこか物足りなさも覚えてしまうのだと思う。Anthro Visionが示す「その場に応じて考える力」や「世界を違う角度から見る視点」は、手続きの整合性とは別の次元で、学びを生き生きさせる。少なくとも私は、その面白さが教育の中心に残っていてほしいと思っている。

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友居葉奈さんの成果が長崎大学のサイトで紹介されました
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